架空楽団ライブレポート


 アンコールでは月面讃歌のブルーの宇宙服を来た石原さんが登場したりと、本当に押さえるべきところは押さえている、おそるべし架空楽団。崇高なファン精神と、確かに道楽だけれど自己満足で終わる気はさらさらないもんね!! というエンターテイメント精神が、20年間という歴史を編み上げていた。これはムーンライダーズ、あがた森魚から生まれた実に華麗な文化のひとつの結晶なのだ。

 以下、口振りから誰かを想像してみましょう。

キャンディ 「スウィート、今日からオレのことをキャンディと読んでくれ。それにしてもスウィート、すっかり外人みたいになっちまったなぁ(場内大爆笑)。」
スウィート 「僕らは高校の時からの同級生だったんですけれど、はっぴいえんどから聴き始めて、加川良さんとか高田渡さんを聴いていると必ずバッキングで見かける名前があったんです。それが慶一さんだったり、かしぶちさんだったり、はちみつぱいのメンバーだったんですけど。あがたさんのバッキングではじめて観たのが衝撃的で、そこから現在に至っています。それで中学の時にフォークソング・クラブを作ったんですけど、レベル高すぎて誰も入ってこなかったなぁ(笑)。そのときのオーディションで歌った曲やります。」

 その曲ははっぴいえんどの名曲「風をあつめて」だった。黒瀬さんと石原さんのギターの弾き語りによる演奏である。黒瀬さん達にとっては嬉しい誤算だったのかもしれない、場内大合唱の嵐での「風をあつめて」となった。ここに集っているひとはきっと、考え方でも住んでいるところでも生い立ちでも何でもみんな全然違うんだとは思う。とはいえ、ムーンライダーズやあがた森魚、はっぴいえんどなどなど、日本語のロック、ポップスのルーツに感動し、支持し、それを愛し続けてきたというバック・ボーンは共通している同志たちであることにもはや疑いはなかった。周りに同じような音楽を聴いているひとがいなくて寂しい想いをしていたり、なんでみんなこの良さがわからないんだろう?って歯がゆい想いをしていたり・・・音楽とともに何かを育んできたことだけは語らずもがな、みんな同じものを抱えているのである。1コーラスだけだったけれど大合唱となった「風をあつめて」、そして山田さんも加わった、続く「Sweet Bitter Candy」でも場内大合唱となった風景は、架空楽団・結成20周年の胸の高まりと相まって、非常に感動的な光景となった。こうしたことってそう狙ってできるものではない。何か名場面を自然に生み出してしまうような不思議めいた感覚がそこに息づいてたとしか言いようがない。

キャンディ 「高校に入った僕らにもうひとり友達ができました、ビターです。」
ビター 「ワン、ワン、ワン、ビターだワン(笑)。」

 その後大学進学で3人は上京し、79年に架空楽団が結成されるというわけだ。架空楽団というバンド名は“どうせ1回こっきりのバンドだから”ということでネーミングされたそうで、まさかその後20年という歳月が過ぎるまで続いていようとは到底想像できなかったそうである。しかもメンバーはみんなそれぞれ多忙を極めているわけであり、全員揃ってのリハは1年でせいぜい2〜3日。しかも日頃そうそう楽器に触る時間があるわけでもないという悩みを抱えつつ、構想1年練習3回本番1日というギリギリの状況下、情熱と愛情、そして使命感がここまでバンドを繋ぎ止めてきたのだという。しかも本来は毎年年始めに岡山のみでライヴをやるのみということだったのが、昨年、今年と夏の東京公演までが実現し、熱狂的なファンで迎えられ、今回20周年記念を迎えたというわけである。

キャンディ 「僕たちも全員今年厄年を迎えて、全員Don't Trust Over 40という感じかな(笑)。」
ビター 「この曲も本当によくやりましたよね、私の結婚式とか(笑)。」

 フル・バンドでのあがたナンバー・アンコールは「ロンリー・ローラー」。山田さんのヴォーカルとコーラス隊とのコンビネーションも絶好調で、まさにみんなで歌える楽しいラスト・ナンバーにはピッタリ!! 廣岡篤哉さんのキーボードと、トランペット、ヴァイオリン、ギター、リズム隊とが軽やかなバンド・グルーヴを生み出して、爽やかでノリノリな良い雰囲気を生んでいる。そして曲はそのまま途切れることなく「シリコン・ボーイ」へと移ってゆく。この曲もサビは会場内合唱状態で、ボルテージは高まる一方である。間奏のギター&ヴァイオリンのユニゾン、そしてメタルチックなギター・ソロ〜ヴァイオリン・ソロという観どころもばっちりでしたね。派手なアクションがたたって、石原さんのベースのチューニングはズレまくっていたのはご愛嬌。山田さんコンタクトによる怒濤のようなエンディング・キメの嵐を経て、ついに20周年記念ライヴも幕を下ろす・・・かのように思われたが・・・。

 石原さん「最後にもう1曲行きましょう。これは私の暴走って奴ですね。やっぱりこの曲がないと終われないですよ。慶一さん、いらっしゃいます?」

 会場内は慶一コールの嵐!! 当然のように、その声に応えて慶一さんが登場し、本当に最後の最後、「BEATITUDE」が演奏されることに。客席は無茶苦茶なくらい大合唱状態である。チューニングが滅茶苦茶だったのがちょっと残念だったなぁ・・・でもとてもチューニングするヒマなんかなかったから仕方ないか。それに本当にボーナス・プレゼントだったわけだし、文句なし、文句なし。2時間半以上に渡る長丁場のライヴだった。


 黒瀬さん「20年やってきて2回東京公演をやらせてもらったわけですが、当分は東京ではやりません。ネタがないんです(笑)。もうこれだけやったので、しばらくは休ませてもらって・・・。岡山ではやるので、ぜひ来られるひとは来てくださいね。また曲貯めて、東京でやろうか(一同大拍手)。ムーンライダーズのみなさん、あがたさん、ゲストのみなさん、本当にありがとうございました。架空楽団の存在する余地も与えておいてください(笑)。本物もいることだしニセモノはずらかりましょうか(笑)。」

 20年目の節目としては最高のかたちにすることができたんじゃないかな。たくさんの豪華ゲストに囲まれ、綿密に練られたセットリストとステージング、そして昨年と比べて思ったのは、バンドとしての演奏のクオリティがさらに高くなったということ。特に今回は各メンバーのプレイヤーとしての観せ場が随所にあったことに胸が躍った。

 東京でのライヴはしばらく未定のような感じだけれど、僕はまたいつか近い将来やってくれるようなそんな気がしている。ライダーズがいる限りは少なくとも、架空楽団は永遠であって欲しいし、ライダーズ文化の主軸としてずっと健在であって欲しいと思う。ただ東京公演が変なかたちでやるのが当たり前になってしまうと、逆に架空楽団を追い込みかねないので、その辺はゆるりとしたスタンスでじわじわと切望することにしよう!! もちろん、観たい気持ちは山々なのだけれど・・・。

 お疲れさま!!
 そして、東京のファンはずーっと待っているからね!!
 (待ちきれなくて、岡山に行きそうな顔触れもちらほら・・・。)


 Reported by Kazutaka KITAMURA
 Photography by Hiromi SAKASHITA
 and Jun YAMANISHI (MRWS)

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