さて、今回のライブは、しょっぱなから嵐のように続く「A-1グランプリ」に、休憩をはさんでメンバーそれぞれのコーナー、さらに休憩を入れて、後は怒涛のようになだれ込むエンディングと、構成や曲順は他のクラブハウスツアーも多分全く同じだと思う(野音だけ曲目が一部違うようだ)。
 行かれた方にとってはご存じの通りのことなので、あえて説明するまでもないのだけれど、事情があって行けなかった方にも、このライブの模様が少しでも伝わることを願っています。

 と、前置きはこのくらいにして、まずは 「あの娘のラブレター」 でオープニング。「紅の翼」 「ジェラシー」 と続き、ここで慶一さんのご挨拶。
「A-1グランプリをお送りします」
とたんに沸き上がる笑いに、「なんだ、気づかなかったの?」とちょっとはにかんで微笑む慶一さんは何ともキュート。

 特にイントロが大好きな 「スイマー」「ヴィデオ・ボーイ」、 そして 「彼女について知っている二、三の事柄」 と、歴史を追って続けられるA-1グランプリ。  ここで2回目のMCが入り、白井物販部長(本人はそう呼ばれるのがイヤだとか)による「ぶっぱんの唄」が披露される。「ねえ、恥ずかしいから、誰か一緒にやらない?」と、心細げにメンバーに声をかけながらも、まんざらでもなさそうに「ぶっぱんの唄」を熱唱(?)する良明さん。
 歌い終えた彼の、「裸になって、自分をさらけ出してくれ!」の声に、会場のテンションが一気に上がっていく。

 そして、私のライダーズお気に入りBEST10の中の1曲でもある 「Kのトランク」「僕はスーパー・フライ」 に続いて、私が初めて聴いた記念すべきライダーズのアルバムの1曲目である 「Y.B.J.」 が始まると、自分の想い出達とも相まって思わず胸が熱くなってくる。続く 「悲しい知らせ」 を最後に、一旦休憩が入り、会場には 「CLINIKA」 が流れ出す。
 ここまで盛り上がった気持ちを必死で落ち着かせながら、しばし私も体を休め、サンダルを脱いで裸足になり、臨戦態勢をとった。

 休憩あけはメンバーのコーナー。このコーナーも文句なしの選曲。
 慶一さんの「鬼火」と、かしぶちさんのピアノ弾き語りの「砂丘」なんて背筋がぞくぞくしちゃったし、良明さんの「トラベシア」と「トンピクレンッ子」は思いっきり楽しめたし、岡田さんの「ウエディング・ソング」と武川さんの「今すぐ君をぶっ飛ばせ」は大好きな曲だし、博文さんの「さよならは夜明けの夢に」では涙ががでてくるほど。

 今さら何をって思うかもしれないけれど、やっぱりこの人たちはすごいんだなぁ、こういう人たちを知って、好きになれて、私ってなんて幸せ者かしら、としみじみ思う。

 メンバーがそろい、「A-1グランプリ」が再開。
「Who's gonna cry?」 に続くのは、あのswingさんをして「肩透かし」といわしめた 「幸せの洪水の前で」、 そして武川さんの朗々とした歌声が心地いい、 「帰還〜ただいま〜」 でA-1グランプリは幕を閉じ、再び休憩に入る。

 次に現れた彼らは、お揃いのTシャツとビニール製のベストに、怪しげなマスクという出で立ち。曲はもちろん、「スパークリング・ジェントルメン」。
 マスクを脱いで、「工場と微笑み」「青空のマリー」「いとこ同士」と、「私のための選曲じゃないの?」と勘違いするほど好きな曲ばかりだ。
 そして、さっき肩透かしをくらってからずっと待っていた「Who's gonna die first?」が、「真夜中の玉子(レゲエバージョン)」と「渋谷狩猟日記」を折り交ぜながら、熱く熱く響く。
 さらに「スカーレットの誓い」「Damn! MOONRIDAERS」。こぶしを振り上げて飛び跳ねる慶一さんと良明さんに促されて、そして自らの心に沸き上がってくるものにつき動かされて、私達も完全燃焼した。
 耳はすっかりいかれてしまったし、もう、声も出ない。そんな私達を癒すように「黒いシェパード」のイントロが流れ出す(ちょっとほっとする)。慶一さんの声は、どこまでも深くて、どこまでも優しかった。



 メンバーの去ったステージを見つめ、アンコールの拍手の中、満足しきった私の胸にのしかかるもうひとつの想い。
「ここを出れば、また次のオアシスまで歩き続ける旅が始まるのか...」

 と、その時。再び登場した慶一さんの口から思いがけない言葉が。
「今日はどうもありがとう。12月に新しいアルバムがでるんだけど、その時に、また、絶対来るから!」
 信じられない思いと、歓びを隠しきれない何ともいえない歓声が場内に響き渡っていく。良かった、そのくらいなら何とか歩いていけそうだ。

 慶一さんの「ファンクラブ勧誘の歌」に続き、「グッズを買いすぎた人に捧げます」の声に、会場のあちこちから「スカンピン」の声が漏れる。
 そして、最後は大合唱になった「くれない埠頭」。この至福の時が終わりを告げるということを潔く受け止めるのには、くやしいけれどぴったりの曲だった。
本当に、本当に、ありがとう、ムーン・ライダーズ!

 今日のライブの感想を言葉で表すとするなら、一言で終るか、はたまた長編小説一本書けるか(って、それは大げさだけど)のどちらかかもしれない。
 が、長編レポートとしては、私の尊敬してやまないswingさんの、読む度に胸にグッと来る素晴らしい野音レポートがあるし、そもそも言葉そのものをあまり知らない私は「一言レポート」のパイオニアをめざしている。ここまでのお粗末なレポートもそれに由来しているということで、どうかお許しを。
 そんな私のライダーズライブ初体験の感想は、

「かっこよかった」
「素晴らしかった」
「幸せだった」
「嬉しくてたまらなかった」
「生きてて良かった」

など(笑)どれもありきたりだけど、それしか言えない、少なくとも今は。だいたいこの私のボキャブラリーで、あの時の気持ちを言葉にしようっていうほうが無理な話なんだけど。
 でも、この感想は私だけでなく、その場に居合わせた誰しもが抱いた気持ちであったに違いないということは断言できる。それだけ私達がひとつになれたライブだった。ライダーズと客席も、客席の一人一人も。
 それは、福岡での公演が10年ぶりだったとか、小さいホールでやっていたからとか、そういうことではないと思う。そう、それは「ライダーズだったから」

 フロアに灯がつき、一人、二人と出口へ向かう人たち。でも、そのほとんどがまだ放心状態でじっと前を見つめたままだった。
 そこへ「何、まだいたの?」とステージから声がする。帰りかけていた人たちが慌てて戻ってくる。6人勢揃いのカーテンコール。姿を見せてくれるだけでも嬉しいのに、最後にもう一度「また、来るから、絶対!」

 慶一さん、その言葉、忘れません。その時は私も、もう少し上手にレポートできるようになっていますから、本当に、絶対、来てくださいね。

 素晴らしいライブをみせてくれたライダーズの皆さんと、あの時間と空間を私と共有してくれたボーイズ&ガールズ、そしてこのレポートをちゃんと読んでくれたあなた方、ライダーズを愛しているすべての人々に、愛をこめて...Damn!


June 25 '96 Miwa