架空楽団ライブレポート

 第二部の幕は「Damn! Moonriders」で開かれた。 「Damn! Moonriders」2コーラスをくり返しただけで、な、なんと「グルーピーに気をつけろ」へ!! こうして聴くと妙なリズムの曲である。プログレチックな間奏での矢島俊輔さんのヴォコーダーのようなコーラスが印象的。第一部の「ディスコ・ボーイ」と言い、『Modern Music』から随分とB級ナンバーを拾ってきたなぁと誰もが思ったことであろう。が、架空が演ってくれない限り、生で聴く機会が今後があるかどうか・・・難しそうな気がなんとなくする。それにしてもこのまま行くと次は「別れのナイフ」あたりだろうか。ちなみにこのへんの曲が数あるライダーズ・ナンバーのなかでもB級的な印象を受けてしまうのは、やっぱり歌詩によるところが大きいんだろうなぁと思う次第である。♪オレのロックにのせて〜だものなぁ。曲は無茶苦茶良いんだものなぁ。

 石原さん「さぁ、次はスーパー難しい曲シリーズをやります。ライダーズのこの曲はテープやシーケンサーを使ったりしてたんだと思いますが、今日は生演奏でやります。夏の終わりに相応しい曲です。」

 ♪I Love You こんな娘とは、2度と会えない
のフレーズがファルセットで静かに歌われると、会場内は発狂にも似た凄まじい拍手喝采のリアクション。ライダーズ・ファンクラブの人気曲投票でも第5位に輝いた「夏の日のオーガズム」!! 当のライダーズ自体が最後に演奏したのもどうやらいまのところ91年の『晩餐』ライヴなわけで、これは非常に嬉しい選曲である!! シンプルながら重厚なシンセの音色と、ギターの歪み、ヴァイオリン、トランペット、ギター・ソロ、そしてパリッとしたリズム隊、この難しい曲をよくぞやってくれた!! という名カヴァーであった。やっぱりこのレコード・アレンジに忠実なサウンドがたまらなくカッコ良かった。

 続いて、第二部早々ゲスト・コーナーであった。メトロファルスの伊藤ヨタロウさんである。おおっ!! 意外なような、それでいて期待通りなような嬉しいゲストである。

 ヨタロウさん「非常にアガッております、私。蒼々たるメンバーが続き、私は直接関係ないんじゃないかと(笑)。5月にやった『俺さま祭り』のツアーで岡山に行った時に黒瀬さんにいろいろしていただきまして。その後豪華な桃を戴きまして、それを食べたら必然的にここにいることが決まっていたという(場内大爆笑)。」

 メトロファルス『俺さま祭り』ツアーの岡山ライヴを主宰したのが実は黒瀬さん。そのときのアンコールでは黒瀬さんもギタリストとして混じって「スカンピン」を演奏するという嬉しいアクシデントがあり、その後僕が足を運んだ渋谷のライヴのMCでもこのことは触れられていた。ヨタロウさんが歌う「スカンピン」って無茶苦茶ハマるだろうなぁって思っていたけれど、こうして生で聴ける機会がすぐに来るとは思わなかった。黒瀬さんの泣きのイントロのフレーズが奏でられ、ヨタロウさんのかすれた、ハンパじゃない情感のこもったパワフルなヴォーカルが踊る。ヨタロウさんと黒瀬さんのギターの絡みがとにかく素晴らしい。割合歪みのギターをプレイすることが多い黒瀬さんだけど、この曲はとことんクリーントーンでブルージーなフレーズやソロを弾きまくっていて、この日の5本の指に入るベスト・プレイだったんじゃなかろうか。

 この後、いつ見ても美人な濱田理恵さん(はぁと)も登場し、ヨタロウさんとのデュオであるホーカシャンのレコーディングが進行中であり、ふたりは今回そのなかを抜け出しての登場だったというエピソード、そしてさらに今年末にはダリエさんの9年振りのセカンド・アルバムもリリースされるという嬉しいニュースもあって大盛り上がりに!!

 この後ステージはふたたびあがた森魚コーナーへ。ふくみちゃんのすすり泣くようなヴァイオリンのイントロとともに「 誰でもありたくない彼氏」へ。この曲の聴きどころは山田さんのヴォーカルとふくみちゃんのヴァイオリンの絡みだろう。続く「キネマ館に雨が降る」でも「スカンピン」同様、澄んだトーンの黒瀬さんのギター・プレイに耳を奪われる。映像的なあがたさんの曲を演奏するのも非常に難しい。そこらのひとがやったのでは絶対にこの雰囲気は出せないだろう。エンディングの張りつめたヴァイオリン・ソロで曲は幕を閉じるのだが、これもまた見事で思わず息を呑むほどだった。

 「霧のステーション・デパート」は打ち込みのオケを使って、山田さんのヴォーカルをフィーチャリング。黒瀬さんのギター、ふくみちゃんのヴァイオリン、そして石原さんのトロンボーンなどが絡むちょっと狂気的な音世界が立ちこめ、あがたコーナー最大の観せ場となった。演奏後、この曲の名カヴァーに感激したあがたさんが「ありがとうーっ!!」と再びステージに乱入する一幕も。何より当のあがたさんの心を打ったこの名演、架空のメンバー自身も1ミュージシャンとして大きな充足感を得られた瞬間だったのではないだろうか。それと同様に僕らにとっても、ある意味まるで子供のように純粋なあがたさんの感受性に触れられた貴重な瞬間だった。このエピソードはあがたファン、架空ファンに末永く語り継げられるに違いない、歴史的な一幕であった。

 さてさて、ステージは再びゲスト・コーナーに。かしぶちファンの僕にとって忘れられない予期せぬ出来事が起ころうとしているのだった。

石原さん 「さぁ、いよいよこの瞬間が来てしまいました。かしぶち哲郎さん!!夏のムーンライダーズ祭りも佳境には入って参りましたが、かしぶちさん、この曲を自らお歌いになったことは?」
かしぶちさん 「ありません。何故この曲をやるんでしょう?こんな難しい曲を。」

 ↑おいおい、自分で作っておいてそりゃないよぉ。ソロ・ライヴでも歌ってくれよぉ。

 コーラスで石丸朋子さんも加わり、一部のかしぶちフリークのなかでは、90年代かしぶちナンバーの最高峰とも称される「プラトーの日々」へ!! 架空にとってはおなじみの曲でもあるのだが、ほぼレコードを再現したアレンジ(細かいことを言うと、『晩餐』NHKホール・ヴァージョン)でかしぶちさんが自ら歌うというのは、かしぶちファンが永らく待ちわびてきた瞬間なのである。「夏の日のオーガズム」ともども、イントロが鳴った瞬間非常に盛大なリアクションで迎えられたのが何よりの証明だろう。それにしてもやはり傑作である。そしてとにかく難しい曲だ。間奏、そしてエンディングのふくみちゃんのヴァイオリンはこれまた風格を感じる聴き応えあるもの。若くて美人で才女。これからが楽しみである。



 そしてやはりこのひとがいないと!! 続いてのゲスト・コーナーにいよいよ鈴木慶一さんが登場である。さらに急遽、かしぶちさんがドラムを叩くという嬉しいハプニングも。

慶一さん 「よくこういう曲を選ぶねぇ。もっとも音程のとりにくい曲を・・・。しかし来年はフェスティバル化したほうがいいですね(一同大拍手)。あがた市とかいう街があるといいんだけれどねぇ。ないですよねぇ(笑)。他にも出てきて歌いたいひとがいっぱいいそうな気がしますし。」
石原さん 「なんかザ・忘年会の夏版という感じですね(大爆笑)。あ、かしぶちさんに業務連絡です。シングル・ヴァージョンです。」
慶一さん 「えっ!? オレ、アルバム・ヴァージョンで練習してきちゃったよ。」
石原さん 「メンバーの方に業務連絡です。アルバム・ヴァージョンに変えます。」

 なんともこのやりとりを観ているだけでも顔が緩んでしまって仕方がない。

 曲は「HAPPY/BLUE'95」である。かしぶちさんのドラミングが聴けるというのは本当に嬉しい。いきなり言われて叩けるものなのかな?とも思ったけれど、かしぶちさんならではのフィルインが随所に散りばめられたパワフルなドラミングを披露。自分のセッティングとは違うので若干叩きづらそうだったけれど、もう僕は満足なのであった。慶一さんもノリノリで歌う、歌う、歌う。エンディングで「Are You Happy? Are You Happy? Are You Happy?」と客席に問いかける慶一さん。そんなの言うまでもないじゃないですか!! ちなみにこの日の石原さんのベース・プレイのベストは個人的にこの曲だと思った。おそらくライダーズのライヴ・アレンジとも違うだろう、流れるような独自のベース・ラインとドライヴ感がとてもキマっていた。

 石原さん「さて、去年もライヴに来られた方、慶一さんが僕たちにこの曲をあげるよと言ったのをおぼえているでしょうか(一同大拍手)? ちなみに架空楽団は今までに2曲もらっています。「ビューティ・コンテスト」と、この曲を歌うと具合が悪くなるというのでもらった曲があります。おまけに今日は立て続けに非常にユーウツな気分になるような曲をやるので、心して聴くようにって感じかなぁ〜。」

 そして科学特捜隊とふくろうの鳴き声が合わさったような例のSE(なんじゃそりゃ)が流れ、「何だ?! このユーウツは!」へ!! この曲を生で聴けるなんて本当に幸せである。幸せなんて言葉からは相当ほど遠い彼方にある詩ではあるけれど・・・。黒瀬さんはひたすらソロをかきむしり、山田さんとコーラス隊との掛け合いがなんとも聴きどころである。ちゃんとエンディングまできちんとコピーしている細かさがまさしく架空である。そして間空けずに「マニアの受難」へ!!ディストーションのギターが入る部分からの演奏で、ギターとトランペット、そしてやはり山田さんとコーラス隊の絡みによる、縦横無尽のドントラ・ワールドを体現。さすがである。ちなみに「マニアの受難」は昨年フル・コーラスで演奏されているのが、あれも見事だったな。

 石原さん「我々自身がマニアの受難状態なわけですが・・・(場内笑)。」

 そしていよいよ、石原さんが言うところの一応最後の曲へ。曲は「Happy Life」!! 石原さんが良明さんパートのヴォーカルを受け持ち、山田さんとのデュエットによるノリノリの大団円だ。アワワワワ〜のインディアン・ヴォイスと、タムタム・フレーズのドラミング、サビのヴァイオリン・フレーズと、とにかくおもちゃ箱をひっくり返したような美味しい名フレーズの宝庫である。 観客も総立ちでステージ上もテンションは最高潮!! それでもまだもっと聴きたい!! という欲求を残し、本編は終了。この時点ですでに2時間余りが過ぎようとしている。でも本当に怒濤の如く、楽しい時間は過ぎ去ってしまうのである。


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